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網膜疾患

網膜疾患は、目の奥で光を感じ取る「網膜」に起こる病気の総称です。糖尿病網膜症や加齢黄斑変性、網膜剥離など、病気によって原因や治療法が異なります。

日本の視覚障害の原因に占める網膜疾患の割合
約4割
加齢黄斑変性の推定患者数
約70万人
加齢黄斑変性の発症が増える年代
50歳〜

症状と受診の目安

網膜は、目の奥で光を感じ取り、その情報を脳に伝える組織です。糖尿病網膜症・加齢黄斑変性・網膜静脈閉塞症・網膜剥離など、網膜に起こる病気をまとめて網膜疾患と呼びます。網膜は一度障害されると元に戻りにくいため、視力や視野に影響が出る前の早期発見・早期治療が特に重要です。

網膜の病気は初期には自覚症状が乏しいことも多く、気づいたときには進行しているケースも少なくありません。以下のような症状が現れたら、早めの受診が必要です。

  • 視力が低下してきた
  • 視界の中心が歪んで見える(変視症)
  • 見たい部分が暗く見える、欠けて見える
  • 視野の一部が欠ける
  • 飛蚊症(黒い点やゴミのようなものが見える)
  • 光が走って見える(光視症)
  • 急に視力が落ちた、カーテンがかかったように見える
  • 色が見えにくくなった

急な見え方の変化に注意

「急に視力が落ちた」「カーテンがかかったように視野が欠けた」「飛蚊症が急に増えた」といった見え方の変化があれば、自己判断せず、早めに受診してください。

病気の種類と原因

網膜疾患は、糖尿病や高血圧などの全身疾患、加齢、強度近視、遺伝など、様々な原因で発生します。代表的な網膜疾患とその主な原因を説明します。

網膜裂孔・網膜剥離

主な原因・関連する要因:強度近視、加齢、外傷

網膜に裂け目ができるのが網膜裂孔です。裂孔から網膜の下へ水分が入り、網膜が剥がれることがあります。網膜剥離は緊急性が高く、裂孔の段階では外来のレーザー治療で剥離への進行を予防できる場合があります。

糖尿病網膜症

主な原因・関連する要因:糖尿病による網膜の血管障害

糖尿病の合併症として網膜の血管が障害される病気です。日本の視覚障害の原因の上位を占め、初期は自覚症状が乏しいため定期検査が重要です。

加齢黄斑変性

主な原因・関連する要因:加齢、喫煙、生活習慣

加齢により網膜の中心部(黄斑)が障害され、視界の中心が歪んだり暗く見えたりする病気です。早期の治療で進行を抑えられる可能性があります。

黄斑前膜・黄斑円孔

主な原因・関連する要因:加齢に伴う硝子体の変化

網膜の中心部(黄斑)に膜が張ったり穴が開いたりして、ものが歪んで見える病気です。見え方への影響に応じて硝子体手術で治療します。

網膜静脈閉塞症

主な原因・関連する要因:高血圧、動脈硬化

網膜から血液を運び出す静脈が詰まり、網膜に出血やむくみが起こる病気です。むくみが中心部の黄斑に及ぶと、視力の低下やものの歪みにつながります。

網膜色素変性症

主な原因・関連する要因:遺伝的要因

光を感じる網膜の細胞が障害され、暗い所で見えにくくなったり、見える範囲が狭くなったりする病気です。進み方や症状の現れ方には個人差があります。

糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症のように全身の病気と深く関わるものも多く、内科的な管理と眼科的な治療を並行して行うことが大切です。網膜剥離のように緊急性の高いものもあり、原因に応じた適切な対応が必要です。

特に気をつけたい方

  • 糖尿病のある方
  • 高血圧・動脈硬化のある方
  • 強度近視の方
  • 50歳以上の方
  • 喫煙される方
  • 網膜疾患の家族歴がある方

検査・診断

網膜疾患の診断には、網膜の状態を詳しく観察し、病変の種類や範囲を正確に把握する検査が必要です。当院では、体への負担に配慮しながら、診断に必要な検査を行います。

眼底検査

瞳孔を広げる目薬(散瞳薬)を使い、網膜の血管、出血、むくみ、剥離などの状態を直接観察します。網膜疾患診断の基本となる検査です。

OCT(光干渉断層計)

網膜の断面を高精細に撮影し、黄斑のむくみ(浮腫)や網膜の層構造の変化をミクロン単位で評価します。

OCTアンギオグラフィー

光干渉断層計(OCT)を用いて、赤血球の動きを捉え、網膜や脈絡膜の血管の狭まり、閉塞、新生血管などを詳細に描出します。OCTA普及前には蛍光眼底造影撮影を行わないと捉えられなかった病変を、造影剤を使用せず描出することが可能であるため、アレルギーや副作用のリスクが少なく、患者さんの負担が少ないことが特徴です。

アムスラーチャート(アムスラーグリッド)

格子状の図を見て、線の歪みや欠けを確認することで、黄斑部の異常を簡便にチェックします。

視野検査

見える範囲を測定し、網膜の障害による視野の欠けや感度の低下を評価します。

治療方法

網膜疾患の治療は、病気の種類や進行度により大きく異なります。当院では、注射・レーザー・手術といった選択肢の中から、患者様の状態に合わせた治療をご提案します。

抗VEGF薬の硝子体注射

黄斑のむくみや異常な血管(新生血管)の活動を抑える薬を、目の中に注射する治療です。加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症などに広く用いられます。

  • 外来で実施可能
  • 症状に応じて複数回行うことがある
  • 病気の進行抑制・視力維持が期待できる
硝子体注射について詳しく

網膜光凝固術(レーザー治療)

レーザーで網膜を凝固し、病気の進行を抑える治療です。糖尿病網膜症や網膜裂孔などに対して、外来で行います。

  • 外来で実施可能
  • 網膜裂孔から網膜剥離への進行予防
  • 新生血管の発生抑制
レーザー治療について詳しく

硝子体手術

進行した糖尿病網膜症、網膜剥離、黄斑前膜、黄斑円孔などに対して、目の中の硝子体を取り除き、網膜を元の状態に戻す手術です。

  • 重症例や手術が必要な病気に対応
  • 網膜剥離の復位
  • 黄斑の病変の改善
硝子体手術について詳しく

経過観察

病変が軽度で進行が緩やかな場合は、定期的に検査を行いながら経過を見守ります。適切なタイミングでの治療開始が重要です。

網膜は一度障害されると回復が難しい組織のため、早期発見・早期治療が視力を守る鍵となります。気になる症状がある場合は、自己判断せず、早めに眼科を受診してください。

日常生活と定期検査

網膜疾患の多くは、全身の健康管理と定期的な眼科検診によって、発症や進行のリスクを下げることができます。特に糖尿病や高血圧のある方は注意が必要です。

  • 糖尿病・高血圧・脂質異常症の適切な管理
  • 禁煙(加齢黄斑変性の重要なリスク因子)
  • バランスの良い食事(緑黄色野菜、青魚など)
  • 紫外線対策(サングラスの活用)
  • 定期的な眼科検診(特に40歳以上、糖尿病のある方)
  • 強度近視の方は定期的な眼底検査
  • 片目ずつ見え方をチェックする習慣

片目に異常があっても、もう一方の目が補うため気づきにくいことがあります。ときどき片目ずつ見え方を確認し、歪みや見えにくさを感じたら早めに受診しましょう。早めの対応が、網膜と視力を守ります。

気になる症状がある方は
お早めにご相談ください

気になる症状がある場合は、自己判断せず、早めに眼科を受診してください。